小さな和菓子屋がやりたいこと

和菓子や日本の伝統産業の課題と今後に思うこと

こんにちは。和菓子悠の広報担当です。今日のテーマは少し壮大ですが、今日あるニュース記事を読んで思うことを書きます。

今日読んだニュースはこれです。どういうニュースかというと、陶磁器産業の卸先が100円ショップが増えてきているというニュースです。

このニュースのポイントは2点です。まず、和食器、洋食器ともに生産量が減少していること。記事中で”2015年度の和飲食器の生産は3万4592トンでしたが、2019年度は3万2454トン、洋飲食器は2015年度が1万2979トンで2019年度は1万397トンとなっています。”とあります。和食器は-6.1%、洋食器は-19.8%減少しています。5年間で量でこれだけ減少しています。次にのポイントは、こういった陶器の卸先、売り先が100円ショップが多くなっている点です。これはどういうことかというと、売上高が減少するという事です。100円ショップで売られている商品の仕入れ代金は100円を上回る事はありません。つまり1個100円以下で卸しているという事です。卸し問屋が中間に入っている場合は中間手数料を差し引かれるため、さらに安く販売することになります。生産量が減り、さらに単価も低くなっているという事ですね。市場規模が加速度的に縮小しているという事になります。今回の記事にあるように、陶磁器の場合はその脅威が100円ショップですが、和菓子の場合はコンビニエンスストアがこれに当たります。現在コンビニエンスストアでは安価でとても美味しい和菓子がたくさん食べられます。今まで和菓子屋さんで買っていた商品をコンビニで手軽に、しかも安く美味しく全国どこでも買えてしまう。和菓子の市場規模は減少していませんが、恐らくこのコンビニスイーツの成長を考えると、街の和菓子屋さんの生産量や売り上げは減っていると推測出来ます。陶磁器のニュースのコメント欄も、「経済が低迷しているので高い器を買いたくても買えない」「税金ばかり増えて可処分所得が増えないので100均でしか買えない」など、価格を第一に考える方々が増えていっているのが現実です。

話を記事に戻すとこれが現在の実情で、ここから派生してくる事としては、まず陶磁器を作る業者が減っていきます。これまで取れていた取り分の大元の全体が減少するので、そこで生き残れないメーカーから廃業していき、職を失った従業員は同業に転職できればよいのですが、そうなれなかった方々は別の業界や産業に転職するしかありません。そうなると、その産業を生業とする総人口が減っていきます。関わる人が減れば減るほど産業は弱体化していきます。そして売り上げが減り、携わる人が減り、という負のループに陥っていきます。さらにこういった伝統産業の場合、後継者問題が必ずといっていいほどセットになっています。俗に言う職人がいる業種がそれに当たります。下積みを長年、薄給で積み重ね、技術を研ぎ澄まし、何十年もかけて究極の域に達する。とても素晴らしい職業ですが、厳しさや地道な修練が長い業界は、少しずつ間口が狭くなっていき、なり手が少なくなってしまいます。中には本当に老舗中の老舗の企業として、脈々と職人の技や生業を引き継いでいくことが出来ますが、老舗になり切れなかった生産者は少しずつ減っていきます。こうやって携わる人が少なくなると、色々なアイデアや面白い試みが少なくなっていきます。競合他社がたくさんいて、しのぎを削ってそれぞれが頑張って切磋琢磨していく、そういう機会が減っていきます。その結果、その産業が好きになるきっかけに出会えない人が増えていってしまい、少しずつ弱体化していってしまいます。特に日本はこれから超高齢化社会が待っています。若者を囲い込めない産業はさらに衰退していく事が容易に予想されます。そこから抜け出すには海外に販売するか、若者を取り込んで国内需要を換気するかの2択が大きな選択肢になります。昭和の時代を支えた製造業者は海外進出をこの十年で急速に進めていて、例えばポカリスエットの大塚製薬やプレミアムモルツのサントリーなども東南アジアに行けば主要都市で看板を目にします。これから人口が増える成長著しい東南アジアでビジネスを拡大することで、今後市場成長が見込めず減少していく日本の需要をカバーし、成長するための戦略をとっています。

衰退していく産業に必要だと思う事

和菓子業界だけでなく、こういった日本の衰退が予想される産業が今後どうしていくべきかに対して当店がやらなくては、と思い行っている事は以下の4つです。

①電子マネーやカード決裁など対応

街の和菓子屋さんではやはり電子決済などかなり遅れている印象です。お客様のお支払い方法は出来るだけ多く準備して選べる利便性を提供したいと考えています。かくいう自分も電子マネー決裁出来ないお店は購入を躊躇することがあります。こういうところで機会損失をしないという点が大事だと思います。

②ネット通販で日本全国で買える

当店が地方の和菓子屋という事もあり、昔から楽天市場で販売しています。また、冷蔵や冷凍が不要で日持ちがする落雁を中心とする和菓子屋という点もネット通販では利点だと考えています。日本全国のお客様に商品をお届けできるネット通販ですが、これもやはり和菓子業界は対応が進んでいない部分だと思います。もちろん、そのお店に行かなければ買えないという希少性はとても大事だと思います。これは本当にどちらが正解でどちらかが不正解ということではなく、ただ当店は日本中の皆さんにお届けしたいという気持ちから通販を行っています。

③競合他社との強みを生み出す

これは通販が中心の当店だからこそ特に考えるべきことなのですが、わざわざ送料を750円払ってまで、日本のどこでも買える物をお客様が欲しいと思ってくださるか、というところはずっと自分自身に問いかけ続けています。当店の花落雁の特徴は他の和菓子屋さんにはない強みだと考えており、最もこだわっている部分です。この強みが生み出せなければ価格競争に巻き込まれてしまったり、和菓子を買う機会に選んで頂けなくなると考えています。お客様に喜んで頂くには”普通”を大きく越える必要があるため、この努力を止めてしまったらおしまいだと思っています。

④強みやこだわりを知ってもらう

この部分もネットが普及した現代だからこそ、手軽にSNSなどを使ってお客様に知ってもらうために声を上げる事ができるようになりました。逆に、情報が膨大になり、声を上げないと知って頂ける機会がどんどん減っていき埋もれてしまいます。(これはネット通販でも同じですね)しっかり自分の主張や意見を伝えていく事で、まず認知して頂けたり知って頂けることが当店の和菓子を買って頂けるきっかけになればと考えています。

色々と思うことが多くたくさん書いてしまいましたが、まだまだ若輩者なので、この内容を読まれて色々なご意見、ご感想をお持ちになる方々もいらっしゃるかと思います。ただ私がこう思っているという事を商品や、サービスに反映していくことで、より当店のことを知って頂ける機会が増えれば嬉しいと考えており、ご批判やご意見も全て受け入れる気持ちで書きました。これからも精進して参ります。それではまた!

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